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純粋数学から応用数学までデータサイエンスに関わる様々なことについて取り上げます!

ランダム行列理論

 

 

ランダム行列理論についての特集が数学セミナーにあったので面白かったところをピックアップしたいと思います.

・ランダム行列とは?

ランダム行列とは確率変数を成分とする行列であり,多変量解析ではウィシャート行列が代表的なランダム行列であります.統計学に限らず,分布の仮定を変えることによって無線通信,ポートフォリオ理論,複雑ネットワーク,など様々な応用例があるところが興味深いです.特にいくつかの限定された統計集団の下での研究がなされています.ランダム行列理論には大きく分けて,ガウス型統計集団やラゲール統計集団などがあり,数学セミナーではガウス型統計集団が主にピックアップされていました.ガウス型統計集団にも大きく分けて3つあります.

(1)ガウス型直交統計集団(GOE)

(2)ガウス型ユニタリ統計集団(GUE)

(3)ガウス型シンプレクティック統計集団(GSE)

ランダム行列理論は,行列の固有値の分布を求めることが重要になります. (1)~(3)は具体的に固有値分布を計算することができるので多くの研究がされています.

 

 統計学から

ラゲール統計集団は,ウィシャート行列を用いて,ガウス型統計集団と同様の条件で構成されています.ウィシャート行列の固有値は主成分分析などを考える際とても重要になります.

医療データx_1,\cdots,x_d,(血圧,身長,体重,\cdots)をn人の患者について測定することを考えます.古典的にはdをfix,nを十分大きい場合の研究が多くされていましたが,医療データなどを考えるときには,nをfix,dが十分大きい場合は考える必要があります.

{n}<{d} の場合,ウィシャート行列の逆行列が存在しないなどの理由から固有値の分布を求めるのが困難になります.従って,先行研究では従来とは異なった手法や方法論が展開されたいます.

・ランダム行列理論とリーマン予想

数論の方からも近年ランダム行列が注目されています.リーマン予想とは数学の未解決問題であることはみなさん知っているかと思います.リーマン予想が重要である理由は,素数の分布問題に決定的な役割を果たすからです.リーマン予想はそれだけでなくゼータ関数と関わりがあり,リーマン・ゼータ関数の零点を考える際には,ランダム行列が役立ちます.

証明されている訳ではありませんが,多くの数値実験の結果により零点全体の分布がランダム行列の固有値の分布に似ていることが確認されています.この現象は「モンゴメリ-オドリツコの法則と呼ばれています.

 

ランダム行列には様々な応用例があることが改めて分かりました.機械学習方面でもランダム行列は注目されているようなので,そちらに詳しい方はコメント等で教えていただけると幸いです.